豪雨の笹藪と雲上の稜線へ。北海道・十勝岳、トムラウシ山、大雪山3泊4日縦走記【前編】
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今回は、昨年行ってきた北海道・大雪山系の3泊4日に及ぶ縦走記録をお届けします。自然の中で感じたことや、道具への信頼について前編・後編に分けてお届けします。
夏の北海道の山は、本州の山々とはどこか異なる、圧倒的なスケールと原生の気配に満ちている。
昨年8月、十勝岳からトムラウシ山、そして大雪山系へと続く3泊4日の縦走へと向かった。 このエリアに足を踏み入れるのは、ちょうど10年ぶりのことだった。
旅のスタートは新千歳空港から。 出発地の東京は今年同様、立っているだけでむせ返るような激しい暑さだったが、降り立った札幌の街は風が心地よく吹き抜け、私たちは意気揚々と街へ繰り出した。
まずは山へ向かう準備として、登山ショップへ立ち寄り熊スプレーとガス缶を購入した。
しかし、ここでコジーを自宅に忘れてきたことに気づいた。
フリーズドライの食事の予定だったので、なくても何とかなるが、あると嬉しい。
あいにく訪れたショップでは売り切れており、他のアウトドアショップにもいくつか電話をかけたが、どこも売り切れか取り扱いがないという返答だった。
半ば諦めかけながら、北海道の老舗登山用品店「秀岳荘」に電話をかけてみると、「オリジナルも含めて、お店にいくつもありますよ」と頼もしい声が返ってきた。
急いで向かってみると、そこにはオリジナル品をはじめとする多種多様なコジーがずらりと並んでいた。 もちろん秀岳荘オリジナルのものを手にとったが、老舗ならではの魅力的なギアの数々に目を奪われ、気づけば店内を巡ることあっという間に1時間が経過していた。
(ちなみにこの秀岳荘さん、下山後に別店舗も含めて3回も買い物に行ってしまったほどお気に入りの場所になった。)
その後、北海道の新鮮な海鮮に舌鼓を打ち、急いで高速バスに飛び乗って旭川へと向かった。
旭川へ到着し、香ばしい醤油ラーメンを一杯手繰り寄せ、翌日からの山行に向けて早々にベッドへと潜り込んだ。
荷物の忘れ物や、街を右往左往したちょっとしたトラブル。 そんな遠回りの時間すらも、これから向かう深い山への高揚感を静かに高めてくれていた。
雨の十勝岳、そして暗闇の訪問者
翌朝、旭川駅からバスに揺られて保養センター前へ向かった。
午前9時前、いよいよトレイルへと一歩を踏み出した。
スタート時はどんよりとした曇り空だったものの、十勝岳のピークに立つ頃には、あたりは真っ白で濃いガスに包まれ始めていた。

視界の開けないガスの中、本州の山とはまた違った、広大で荒々しい大地が足元に広がっている。
やがて空からポツポツと雨が落ち始め、1日目の目的地である美瑛富士避難小屋のキャンプ場に着く頃には、すっかり本格的な雨になっていた。
ぬかるんだ地面と水たまりの中から、少しでも乾いている場所をなんとか探し出し、濡れないよう素早くテントを設営した。
雨のおかげで、テン場の近くには滝のように豊かな水が流れていたため、浄水器を使ってしっかりと命の水を確保。その日は温かい食事をとって、濡れた身体を温めながら早々にシュラフへと潜り込んだ。
翌朝、目を覚ましてテントのジッパーを開けると、昨夜私たちが寝た時にはなかったはずのテントが、すぐ近くに3張りも増えていた。
気になって声をかけてみると、彼らは今日自分たちが向かう南沼からスタートしたのだという。
途中の激しい笹藪と足を取られるぬかるんだアップダウンに悪戦苦闘し、暗闇の中、夜の9時過ぎに命からがら辿り着いたのだと語ってくれた。
今日これから自分たちが歩く道の話だ。
少し緊張しながら、2日目の準備を始めた。
激しい笹藪と、道案内の小さな命
テントを撤収し、2日目の行程へ入った。 前日の激しい雨が嘘のように打って変わって、爽やかな晴れ間が広がっていた。
オプタテシケ山の山頂を目指して歩いていると、岩場のどこかから「チチッ」と小さな声が聞こえてきた。
立ち止まって探してみると、岩の隙間からナキウサギがこちらを覗いている。
こういう出会いがあると、それだけで北海道の山に来たなと思う。
植生も景色も、本州で普段歩いている山とはどこか違う。
そんな景色を眺めながら歩き、無事にオプタテシケ山の山頂へ到着した。
しかし、ふと目を遠くに向けると、空の彼方に不穏な黒い雲が湧き上がっていた。
まだまだ今日の行程としては序盤だ。天候の変化を警戒し、山頂での休憩も早々に切り上げ、双子池キャンプ場方面へと向けて足を早めた。
先達のハイカーたちから「ここから先が一番苦しい」と聞かされていたエリアが見え、上から下を見下ろすと、緑が異様なほど濃く生い茂っていた。
10年前にここを訪れた際、あまりの大雨にたたられてテン場に2泊停滞した記憶が鮮明に蘇ってきた。
当時、海外から来たパーティーが泥沼に顔から突っ込みながらも、大爆笑して楽しそうに前進していたあの光景。
そんな懐かしい思い出に浸りながら歩みを進めた瞬間、ポツリと落ちてきた雨粒は、あっという間に空から叩きつけるような激しい大雨へと変わった。
目の前を塞ぐのは、背丈ほどもある重く濡れた笹藪だった。
レインウェアを着込んでいても、かき分けるたびに笹から溢れ出す大量の水滴が、容赦なく体を濡らしていく。
細く見えづらいぬかるみ道。
足を取られる泥。
延々と続く、容赦のない急なアップダウン。
雨と濡れた笹の重圧に体力がじわじわと削られていく中、足元の泥道で不意に小さな影が動いた。
立ち止まってじっと見つめると、雨の中で身体を小さく濡らしている鳥のヒナだった。

巣立った直後なのか、それとも風雨で巣から落ちてしまったのか。
その小さなヒナは、まるで私たちを先導するかのように、チョコンチョコンと前に歩きながら進んでいく。 私たちはその後ろを静かにしばらく歩き、そっと横を抜き去った。
「オオルリのヒナかな。これからあの青い鳥になるのかな」
そんな話をしながら、また笹藪の中へ戻っていく。
過酷な激しい笹藪漕ぎの中、ほんの一瞬だけ訪れた温かな時間。
その小さな命から静かなパワーをもらいながら、私たちはさらに深く、トムラウシ山へと続く過酷なトレイルの中へと足をふみ出していった。
朝、すれ違ったハイカーから聞いていた情報通り、とんでもない時間がかかったが、疲弊しきったところでようやく雨がやみ、目の前が開けて稜線が見えてきた。
トムラウシがまるで圧倒的な城のように聳え立っている。
そこまで上がれば、あとは平坦な道が続いて今夜のテン場である南沼野営指定地に辿り着くはずだ。
途中水場を見つけては補給していた
途中、冷たい水を補給したり、すれ違った地元のハイカーとの温かい会話を楽しみながらも、やっとの思いで上まで上がった。
この日歩いてきた道のりが奥に一望できる
きつかった行程もようやく終わりが見え、日没前には無事に南沼のテン場に着くことができた。
この山行で穿いていたTrail Wide Pants
今回の縦走では、山に入る前から下山後まで、ほとんどTrail Wide Pantsを穿いて過ごしていた。
特にこの日は大雨の中で長時間歩き、背丈ほどある濡れた笹を何度もかき分けた。
パンツにとっても、なかなか厳しい使い方だったと思う。
それでも笹に引っかけて破れることはなく、濡れた状態でも肌にまとわりつきにくかった。
雨が止んでから歩き続けていると、いつの間にかかなり乾いていたのも印象に残っている。
もちろん、本格的な雨の中ではレインパンツの代わりになるものではない。
それでも、雨が上がったあともそのまま歩き続けられることや、濡れても不快感が少ないことは、長い山行ではかなり助かった。
羽田から新千歳へ向かう飛行機でも穿いていたし、この日の雨の山でも穿いていた。
下山したあと、そのまま旭川の街でご飯を食べに行く時も同じパンツだった。
山だけのために着替えを用意しなくても、そのまま旅を続けられる。
Trail Wide Pantsを作るうえで考えていたことが、こういう山行では自分自身にもよく分かる。
次の山や旅で、気軽に穿いてもらえたら嬉しいです。
次回の後編では、前日とは打って変わって快晴となったトムラウシ山へ。
そして忠別岳の先で出会った、ヒグマとの出来事について書きます。
【今回縦走を共にしたアイテム】
【実際に「着心地」や耐久性を確かめてみたい方へ】
「過酷なアルプス縦走に耐えるスペックと、日常に溶け込む風合いを確かめたい」という方のために、私たちは毎月ポップアップストアを開催しています。
実際のプロダクトに触れ、私たちのモノづくりの空気感を感じに、ぜひ遊びに来てください。